銀河帝国分裂戦争末期に出現した高性能婦人士官用に、特別に開発された高機動戦闘倍力服で、約50万周期の間近衛部隊等拠点防衛用に主に使用されている。
宇宙や成層圏等の空間機動戦における優位性は、いかに高性能のパイロット(一般的に肉体が大きい)を投入するかに負う部分が大きいのと同時被標的としてのサイズの小ささにもかかっていた。これらの相反する要求を満たすものとして、カルナクリン全自動クローン兵員製造廠等で高性能婦人士官が開発され、カルナクリンと共同で実戦化を図っていたキメリコラ全自動兵器廠からは機動戦闘倍力服《クアドラン》シリーズが送り出された。
《クアドラン》シリーズは、空間機動兵器に倍力服のシステムを投入した物であるだけに、その性格からして、歩兵用パワード・スーツというよりはむしろ空戦ポッドに近い。
婦人士官特有の体型に合わせて開発されたために、事実上胸部のみで胴体のない、一種独特な形状(プロポーション)を有する。《クアドラン》シリーズの中でも、比較的初期に戦列化した軽装甲、高機動型の《ロー》は、そのバック・ポッドのボリュウムと、高速照準システムの《顔》によって、配備機数が少ないにもかかわらず、監察軍、ゼントラーディ軍の両方にあまねく知れ渡った存在となっている。
《ロー》は、極限までコンパクト化された基本設計の上に、加速度、推進剤問題をある程度、棚上げに出来る暫定的イナーシャ=ベクトル・コントロールシステムまでも付加された、非常な高品位兵器であったため、ゼントラーディ軍の運用体制に組み込むに際しては、莫大な困難を伴い、稼働率は極めて悪い物となり、ほんの少数しか戦線に投入されていない。兵器システム全体としての戦果は決して高くないが、ゼントラーディ軍空戦部隊のエースのかなりの数がこの《ロー》を愛用している事もあり、一般には名機として伝えられている。
なお、《ロー》の他、数種の《クアドラン》シリーズに搭載されたキメリコラ特殊イナーシャ=ベクトル・コントロールシステムは、異機種搭載の記録はなく、一部には、その有効性を疑問視する向きもある。
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